始まっている公文書 デジタル時代 その2 ~ 事案ファイル方式から随時ファイリング方式へ ~

コラム
データ整理

前回は、デジタル化の影響を受け、変更された行政文書管理の改正点の一つである「行政機関での保存期間短縮と国立国会図書館への早期の移管」の意義について紹介しました。今回は、これまでは紙文書での管理であった故に、事案がまとまってからファイルしていた「事案ファイル方式」についても、デジタル化することでより信頼度の高い「随時ファイリング方式」を適用できることについて説明します。

公文書管理法のポイント

内閣府の「公文書等の管理に関する法律のポイント」のうち次の2点は、特に、デジタルと関連性が強いです。

① 統一的な文書の管理ルールを法令で規定
これまで、行政機関ごとに、バラバラだった文書の管理ルールを第4条で、文書作成、第6条で、保存、第7条で、行政ファイル管理簿を規定し、統一的な文書の管理ルールを公文書管理法で規定している。

② 移管制度の改善 
第5条で、国立公文書館への移管をできるだけ早い時期に設定すること、第8条で、移管対象はすべて国立公文書館に移管することを規定している。

行政文書の管理に関するガイドライン」の最新版は、令和4年2月7日版です。

紙文書と電子文書でのファイル、バインダ、フォルダの違い

紙文書と電子文書では、ファイル、フォルダの考え方が異なっています。「随時ファイル方式」の説明に入る前に、図1で、整理しておきましょう。

紙文書では、ある目的のために複数の文書を集め、束ねて文書整理用具に収納することを「ファイル」すると呼んでいます。この束ねた文書を「ファイル」と呼ぶこともある。このような紙文書を収納するものとして、「バインダ」或いは「個別フォルダ」があります。個別フォルダをまとめて収納する「ファイルボックス」を利用することもあります。「バインダ」は、「ファイル」と呼ばれることもあります。文書の纏まりを識別するために、仕切りカードを挟み込むこともあります。

電子文書の場合について、図2にて説明しましょう。電子文書の場合は、個々の文書自体をファイルと呼んでいます。ファイルを束ねるものとして、フォルダがあります。また、フォルダは、階層を構成することができます。ここで、注意したいのは、電子文書では、「ファイル」と言えば個々の文書そのものを指し、紙文書とは異なっているということです。

紙文書の場合の「随時ファイル方式」と「事案完結方式」

行政文書の管理単位は、紙文書時代のなごりからファイルと呼ばれています。先に説明したように、「ファイル」は、ある目的のために複数の文書のことを指しています。

行政文書には、紙文書を管理する方法として、「随時ファイル方式」と「事案完結時ファイル方式」があります。

以下は、行政文書管理ガイドライン 平成 23 年4月1日(最初の版)からの抜粋です。また、 平成27年度 12月24日開催 公文書管理委員会(第47回)で、提示された「行政文書ファイルの整理の考え方」を参考として図3.1、図3.2を引用します。
迅速な所在検索や効率的な整理・保存の観点からは、随時ファイル方式の方が望ましいとされています。

① 随時ファイル方式
文書を作成又は取得した段階で随時ファイル化する方式である。
具体的には、各々の職員が自ら分担している事務に係る文書を自ら直ちに分類するもので、分類の名称、保存期間及び保存期間の満了する日をあらかじめ記載した紙フォルダ、バインダ、保存箱などのファイリング用具に、個々の行政文書を作成又は取得後直ちに随時格納することによりファイル化する方式である。図3.2 に、紙文書での随時ファイル方式運用を示す。

② 事案完結時ファイル方式
一定の事案処理が完結した段階でファイル化する方式である。
個々の行政文書に名称、保存期間、保存期間の満了する日を設定することとなる。
図3.1に、紙文書での事案完結ファイル方式運用を示す。
「非定型かつ一定期間に業務が集中し、作成される文書の内容や分離が予測しがたい場合」は、事案完結時ファイル方式が望ましいとしていた。これは、このようなケースでは、随時ファイル方式での運用が複雑になるためであった。

「事案完結ファイル方式」の限界

一般企業においても事案に相当する業務は多く、様々な企画やプロジェクトも同じようなものです。
事案を「ケース」と考えてもよいかもしれません。事案の開始(オープン)から、終了(クローズ)までの期間が短い場合は、比較的、問題は少ないですが、この間が長くなると以下のような問題が起きやすくなります。
・経緯文書の抜け漏れが発生する。
・経緯文書を恣意的に選択する。
・経緯文書を結論に都合のよいように直してしまう。
このような問題は知られていましたが、紙文書では、対処する運用が煩雑なため避けられてきました。

電子文書では、「事案(ケース)」にも「随時ファイル方式」の適用が可能

行政文書の電子的管理についての基本的な方針(平成31年3月25日)では、行政文書の作成作業を共有フォルダで行う場合、以下のように定めています。
①組織的な検討段階に入った行政文書は「検討中フォルダ」に格納し、
②組織的な検討を経た行政文書は「記録用フォルダ」に格納する。
記録用フォルダ(記録用領域)と検討中フォルダ(検討中領域)を分け、混ざらないようにしている。
さらに、個人的な検討段階で作成した文書は当該個人のみがアクセス可能な「個人用フォルダ」に格納にすることとしています。
 共有フォルダの場合は、一旦、「記録用フォルダ」に格納した文書については、「記録用フォルダ」のアクセス権を適切に設定することで、読出し権限のみを許可して変更・削除権限を持たせなくすることが容易です。
 このため、検討中フォルダで組織的な確定を行った電子文書を随時、記録フォルダへ登録することが可能です。このように検討中フォルダを利用することで、検討内容が組織的合意に至る都度、文書を「記録フォルダ」に登録していくことができます。

検討中フォルダの使い方の留意事項

検討中フォルダは、一般企業では、編集中文書をおく場所に近いと考えられます。ここに文書を滞留させてしまうと、紙文書の「事案完結ファイル方式」での懸念点が同様に発生してしまいます。そのため、滞留が長くなった時は、一旦、中間段階での組織の考え方をまとめ、それを記録フォルダに登録することが必要でしょう。

記録フォルダへの登録プロセスが重要である

記録フォルダには、組織として承認した、または確定した電子文書が登録される必要があります。このプロセスを担保するには、記録フォルダへの登録権限は、このプロセスを管理するワークフローシステムに類するもので実行することが望ましいです。

まとめ

これまで、紙文書で重要文書の記録を保存していた企業にとっては、行政文書の電子文書に関する対応が参考になります。事案対応の場合も、「検討中フォルダ(領域)」と「記録フォルダ(領域)」を分けることで、「随時ファイル方式」を適用できるので、文書作成時から記録までに時間を置かない質のよい記録(電子文書)を蓄積するようにしていくことをお勧めします。

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