【前編】データの“永年保管”と、そのために必要な対策・仕組み
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新年度がはじまり、4月から新しく社会人になった方にとっては、緊張の日々が続いていることでしょう。社会人になると、会社には捨てずに保管しなければならないデータファイルがたくさんあることに気づいたでしょうか?法令により保存期間が定められているものもあれば、業界のガイドラインにしたがって一定の期間保存するものもあります。
でも最近では、保管開始時には期間を定めることができないなどの理由から、保管が長期化するケースが増えているのです。
この記事では、保管を開始する時点では期限を定められず、“削除すべき時”がきたら削除するという管理方法を“永年保管”と呼び、前編と後編にわけて「データの“永年保管”」について考えていきます。まず前編ではデータ保管の現状と保管が長期化している事情を確認し、後編では期限を定められない長期の間データファイルを確実に残すためには何が必要なのか、必要な対策・仕組みについて考えます。
1.データ保管の現状
情報資産の原本保管は、紙やマイクロフィルムではなく、データファイルのまま行われるようになってきました。だからといって、データ保管技術が画期的に進展したわけではなく、また紙やマイクロフィルムのような長期保管性の高い記録メディアが新たに発明されたわけでもありません。記録容量や検索性の観点から紙やマイクロフィルムでは対応できず、かといって適切な保管メディアがまだないために、“とりあえず”のデータ保管策が選択されているのが現状です。重要なデータファイルではあるものの再利用の可能性が低いため、パブリッククラウドや階層型アーカイブシステムなどで、現用IT業務の延長として、データ移行が楽で、より安価な保管コストとなるような保管方法が選択されているようです。
2.データの“永年保管”が増えている。増加の背景
データファイルを原本保管する場合、文書などと同様に法律などで保存期間が規定されている場合があります。
ただ、昨今、期限を定められない保管データが増える傾向にあります。期限を定められない保管データは“永年保管”となります。
ところで、この“永年保管”とはどういう意味でしょうか?永久に削除しないという意味でしょうか?違います。“永年保管”は「ながらく保管する」ことではありますが、永久に何千年も保管するという管理方法ではありません。保管を開始する時点では期限を定められず、“削除すべき時”がきたら削除するという管理方法です。
保管を開始する時点では期限を定められず、“削除すべき時”がきたら削除する。期限を定められない保管データが増えているのは、以下のような事情があります。
- 保管すべき期間がわからない
- 保管用データを整理できない
- 会社ごとに考え方が異なる
- 期限が来ても消せない!?
それぞれについてご説明します。
- ◆保管すべき期間がわからない
- データファイルを長期保管する理由として、証拠性担保が顕著になりつつあります。クレームや訴訟時に自身を護るために、全ての証拠データを改ざん不可な環境で残しておきたいとの要望です。したがって、対象となる商品・製品などが利用されている間は、データファイルも残しておく必要があります。具体的には、建設工事データ(ビル、橋梁、トンネルなどがある間)、自動車設計・製造データ(対象車種が利用されている間)、医療・治療データ(患者が生きている間)などがあります。
- ◆保管用データを整理できない
- 法律などで保存期間が規定されているものについては、対象データが決まっている場合があります。例えば、建設データの場合、営業図書は竣工後10年(建設業法)、設計図書は15年(建築士法)、構造計算書は15年(建築基準法)などが代表的です。一方、建築現場では、現場写真や議事録などのデータファイルが発生の都度サーバに保管されています。建設工事は数年に及ぶこともあり、工事あたりのデータ量は2TB、ファイル数は100万件以上になるとも言われています。工事完了後に残しておきたいデータファイルを選別する作業は大変手間がかかるため、選別せずに残しているようです。この場合、必要な時に必要なファイルだけを取り出す仕組みが必要とされています。
- ◆会社ごとに考え方が異なる
- 昨今増加しているデータファイルの保管理由は、法令遵守よりも、証拠性担保や品質不良発生時の検証目的などが顕著です。これらは各社事業部などの業務の一部であり、法律などで規定された保存期間があるわけではなく、社内規定や競合他社事例を参考にして保管しているようです。これもまた保管期間が長期化する理由となっています。
- ◆期限が来ても消せない!?
- 保管開始時に期限を設定した場合であっても、期限が過ぎてもすぐには削除できないだろうという話も、よく耳にします。設定された期限の裏づけがあいまいだったり、担当者が(何代も)代わっていたり、消してしまうと二度と再生できないことが不安をかきたてたるなどの理由から、削除せず、次の担当者に順送りしてしまうのだそうです。
まとめ
保管にあたり期間を定めづらく、また、たとえ定めたとしても期限どおりに削除することが実際にはむずかしいなどの事情から、保管期間が長期化するケースが増えています。
技術の進展によって日々生まれるデータファイルが増えるなかで、そのデータ容量は膨大です。後編では、このように保管時に期間を定められず保管期間が長期化すると、どのような保管方法が必要になるかを考えていきます。