ワークフローシステムを使いこなせ ~最終承認結果は、ワークフローシステム外で管理しよう~

コラム
データ管理

今や大多数の企業では、勤怠管理、旅費申請、経費精算などの定型化が進んだバックオフィス業務では、ワークフローシステム/サービスを導入済、運用中のことと存じます。令和4年1月1日から、電子帳簿保存法 電子取引で、電磁的記録保存が義務付けられ、現在、宥恕期間中です。これを単にやらねばならいことが増えたという見方をするのではなく、従来の紙での処理を電子で行い効率化できるチャンスと捉え、ワークフロー化に取り組んでいる会社も多く見受けます。このような場合には、個別の業務に合わせ、高機能な画面設計、経路設計ができる汎用型のワークフローシステムが利用されることが多くなっています。

このように利用が進んできたワークフローシステムですが、ワークフローの最終承認結果の保管について、注意を払って頂く必要があることを説明します。

ワークフローシステムの切替え時の問題点

(1)ワークフローシステムはフロントエンドシステム

ワークフローシステムでは、様々な処理や承認ルート設定などを行うことができ、業務効率が上がります。それゆえ、常に機能、性能アップが図られています。また、自社の業容が大きくなるにつれて、必要となるワークフローシステムの機能も増えてきます。つまり、業務のフロントエンドにあるワークフローシステムは、利用する各社において、その利用期間(ライフサイクル)が短くなることが想定できます。

(2)承認結果は、ワークフローシステム内に蓄積される

一方、現在の殆どのワークフローシステムでは、その承認結果は、図1に示すように、ワークフローシステム内に溜め込まれるのみです。ワークフローシステムでは、起票者は、承認依頼画面に必要な入力を行い、関連資料を添付ファイルとして、起票します。そして、それらの画面、添付ファイルは、必要な承認者の承認を得た後、最終承認者に回付され、承認を得たところで、当該案件の承認処理が終わり、承認結果として、「承認画面、添付ファイル、承認履歴」が、ワークフローシステム内に残ります。これらは、案件が処理される都度蓄積されていきます。

(3)ワークフローシステムの切替え時に起きること

 現状の殆どのワークフローシステムでは、蓄積した承認結果を外部に一括して、取り出すインターフェースを保有していません。このような時、ワークフローシステムを一新して、機能強化を行おうとした場合について、何が起きるか机上検討します。以下は、前提条件です。
【前提条件】
・第一世代のワークフローシステムは稼働準備に、半年を要した。
・第一世代のワークフローシステムは、5年間実稼働した。
・第一世代のワークフローシステムの中に承認結果は、会計年度終了後、7年間保管義務がある。


このようなケースでは、図2に示すように新ワークフローシステムが稼働しても、旧システムの承認結果がシステム外に一括取り出し(エクスポート)できないことから、新システムが稼働しても、承認結果の保存義務がある7年間については、旧システムでも承認結果を参照できるようにしておく必要があります。

つまり、以下の2つの問題点が生じます。

コスト面)参照のみのために、旧システムを維持・運用するコストが7年間発生してしまう。
保守リスク面)システムベンダーから、7年間保守の継続を受けられるかどうか。

今回の前提では、「承認結果を7年間参照できる必要がある。」としましたが、30年の保管が必要であった場合は、どうでしょうか。30年間の参照のために、旧システムを維持するのでしょうか。 コスト面もありますが、システムベンダーから30年間の保守を受けるという前提自体が、現実離れしていると思えます。

ワークフローシステムのデータ移行の実現性

承認結果の外部への都度取り出し機能

最近のワークフロー製品では、「承認結果を外部へ都度、取り出しする」機能を持つものが増えてきています。
この機能を用いると、図4に示すように、ワークフローが最終承認された後の結果である「承認画面、承認履歴、添付ファイル」を起票者または、承認経路にいた承認者等が、ユーザー操作で、ローカルPCやファイルサーバーの指定の場所へ都度、取り出しできます。

まずは、ここまではやっておきたい

 ワークフローシステム製品を切替えても承認結果を必要な期間保管するためには、文書管理システムを用いて、少なくとも以下のような対応を取っておく必要があります。この際に利用する文書管理システムは、機能の豊富さよりもむしろ製品ライフサイクルが長いと期待できるものを選びましょう。

①上記図4の承認結果の都度、外部取り出し機能を用いて、図5のように、A製品を使った実運用期間の間、ワークフローの最終承認後、担当者を決め、都度、手動にて承認結果とそれに関連するメタデータを文書管理に登録していきます。

②ワークフローをB製品に切り替えた場合も、その実運用期間中は、図4の機能を使って、担当者を決め、承認結果とメタデータを文書管理システムに登録していきます。

■効果 このように、ワークフローにて最終承認を行うたびに、承認結果とそのメタデータを文書管理システムへ登録していくことで、機能の高いワークフローシステム製品をフロントシステムとして使い続けることができます。

さらに、API利用で自動登録までは目指したい

そうは言っても、承認処理の度に手作業を行うのでは運用も大変ですし、登録漏れの心配もあります。そこで、目指したいのはAPIの利用です。図4の機能に関してAPIの提供があるワークフローシステムも存在します。このようなワークフローシステムでは、最終承認の度にAPIを用いて、図6のように文書管理システムへ承認結果・メタデータを自動登録できるようにしておきたいですね。ここまでやっておけば、運用負荷も低くなります。

まとめ

電子帳簿保存法 電子取引で、電磁的記録保存が義務となったことにより、会計帳票類の電子処理が進みつつあります。これに伴い、高機能な画面設計、経路設計ができる汎用型のワークフローの本格利用も急速に広まってきました。しかしながら、ワークフローシステム内に、長期の保管義務がある法定保存文書を蓄積してしまうと、ワークフローシステムを臨機応変に変えることができなくなり、ベンダーロックインに陥ってしまうということを十分認識する必要があります。

本報では、ワークフローの承認結果をその都度文書管理システムに登録することで、この縛りから逃れられることを示し、将来的には、APIを利用した自動登録の方向性も示しました。

ワークフローシステム導入時からシステム切替え時のことを想定したシステム設計、運用設計をしましょう。

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