記録の伝承!マンション管理組合の悩み

コラム
セキュリティ

会社での文書・情報の記録・保存は、きちんと残せていますか?程度の差はあれ、その必要性については、経営者も従業員も理解されていることと思います。

一方、マンションにお住まいの方も多いと思います。管理組合は居住者から構成され、管理組合が、居住者の共同生活を守っています。管理会社がいるから大丈夫という訳にはいきません。マンションは、30年・50年と大規模修理を行いながら長期に利用することがざらです。

マンションの記録ということで、皆さんは、どんなものを思い浮かべますか?総会資料、総会議事録、管理規約、管理規約変更記録、大規模修繕記録、様々契約書などです。大規模修繕周期は12年とも言われますが、これまでの記録やその反省点などを残していないと、マンション管理会社や施工業者のいいなりになってしまいます。

では、質問です。マンション管理組合の記録は、きちんと残せていますか?今回は、このお悩みについて取り上げてみました。

1. マンション管理組合の記録を残すための費用が予算化されない

マンションの居住者にとって、マンション管理費は1円でも安い方がありがたいですね。実際、いろいろな事情で値上げを繰り返していることも多く、問題が起きない限り、記録を残すことの大切さが認識されていません。また、実際、問題が起きても、喉元を過ぎれば、手を付けたくなくなります。というわけで、今すぐに問題になることでないので、記録を残すための費用が予算化されません。

2. 記録を残すことは、マンション管理組合の役員でも対応できそうな気もする

マンション管理上発生する書類は、会社に比べれば、実際、そんなに多くもありません。そこだけ見れば、役員が引継ぎの際に、片手間でやれば、できるような気もします。わざわざ、お金を掛けてまで外部に委託する必要もないように思えます。

しかし、具体的なやり方がわからず、役員もそのために報酬をもらってはいないので、必要だとは思いながらも誰も率先しては行いません。ということで、過年度分に記録はただバインダーに綴じられて積みあがっていきます。

3. 紙書類なので、場所を確保できない

大抵のマンションでは、書類は、紙のままです。紙書類をバインダーに綴じて保管・保存するのですが、大規模マンションのような管理組合用のスペースに余裕のあるマンションを除いて、中小規模のマンションの場合は、管理組合の記録を残すための場所の確保が難しいケースもあります。中には、役員交代に合わせて、バインダーを引き継ぎしている間に、そのバインダーを紛失した事例もあります。

4. これまでは、文書保管の倉庫業者に預かってもらえなかった

書類・文書は、大切なものということで、書類・文書を専門に、セキュリティに気遣って保管委託を受けてくれるサービス会社は、過去からありました。しかしこのようなサービス会社の契約対象は、法人のみで、法人化していない管理組合は、預け先がなかったのです。しかし、最近になって、法人化していなくても、マンション管理組合の書類・文書を預かってくれるサービス会社が出てきています。これは、朗報になると思います。でも、あまり知られていません。

5. 電子化を進められない事情

マンション管理組合の多くは、これまでは、書類・文書を紙で授受していました。電子に変えれば、スペースの問題は解決できることは明白です。最近の大規模マンションの中には、殆どの記録を電子で保有しているところもあるようです。  電子化を進めると大きな問題が2つあると認識しています。

(1) 情報漏えいのリスク対策へのノウハウが不足
 情報漏えいと言っても、紙ですとバインダーや書類を持ち出すくらいで、量は知れていますが、電子になると一挙に多量に持ち出される可能性があり、きちんとした対策が必要になります。しかし、高度なIT知識が必要なため、各マンションが自力で対応することは実際上、不可能です。一方、マンションの管理費用も潤沢ではないので、そこまで面倒を見てくれる業者も少ないのです。

(2) 電子データを喪失するリスクへのノウハウが不足
 マンションで電子データを保管・保存する場合、費用、運営体制の観点からクラウドを利用することになります。クラウドにも障害時にデータ喪失のリスクがあります。対策が必要ですが、現時点では、高度なIT知識が必要であり、各マンションが個別に対応することは難しいです。

6. クラウドサービスとの接続を許可しないマンション管理会社もある

とは言え、管理会社と管理組合の情報共有には、クラウドサービスが極めて有効です。しかしながら、マンション管理会社の中には、管理組合が望んでも、セキュリティ観点を理由に、クラウドサービスへの接続を拒む会社も存在しています。このため、電子的な記録の伝承に進めない管理組合もあります。

7. 高年齢の居住者がIT操作できない。

高齢の居住者では、ネットにつながったPC環境を持っていないとか、PC操作ができないということで、電子的な手段での記録の伝承ができず、紙のままとなり、伝承が、うまく進まないケースも多くあります。高齢と言ってもまだ若い60歳代の方の中にもPCが苦手という方がおられるのですが、サポートする体制がありません。

まとめ

今回は、マンション管理組合が抱える記録伝承について悩みを多面的に集めました。会社生活も大事ですが、気づいたら自分が住んでいるマンションが大変なことになっていた。こんなことを避けるため、生活者として、結集し、ノウハウを共有できる場所ができることを期待したいです。また、マンションに住む住民が多く益々高齢化してくることを考えると政府、行政の旗振りも期待したいところです。

関連記事