【第4回】業務マニュアルを整備して、事務作業のテレワーク化を進めよう。業務マニュアルを作成する ~テレワークで変わること~
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本シリーズでは、事務作業のテレワーク化について、業務管理者向けに、その進め方について取り上げています。 「第3回 現状の作業方法の調査 ~作業担当者と話し合おう ~」では、作業担当者が、今使っている業務マニュア ルの情報を集めて、業務管理者と作業担当者の間にある認識の差異について、業務管理者が、その原因を考えることをお勧めしました。 今回からは、いよいよテレワークに対応した業務マニュアルの作成を行います。まずは、テレワークで変わること、変えなければいけないことについて整理します。
1.テレワークで変わる作業環境(テレワークで変わること)
これまでオフィスにメンバーが集まって、作業担当者、業務管理者が協力し合って業務を進めていました。テレワークでは、各自が、自宅等に分かれて作業を進める必要があります。そこで起きる、作業環境の変化は次のようなものです。
これまでは、紙帳票、紙文書を利用してきた業務処理してきた場合は、テレワークでは、当然のことながら、紙帳票、紙文書の直接的な利用はテレワーク環境では物理的にできません。
そこで、紙帳票・紙文書をスキャニングして電子化することを含めて、代替手段をとることが、必要になります。
これまでは、オフィスで作業していたので、比較的業務処理に集中できる環境でした。しかし、テレワークの場合、多くは、自宅での作業になります。日本の住宅環境では、自分用の書斎をもっていることは、極くまれで、家族との共用スペースの利用になるため、事務所にいる程は集中できない、雑音も入ることを考えておく必要があります。
これまでは、職場で机に座っているだけでも、他の作業担当者の状況がわかり、リアルタイムの声掛けもできました。
これにより、業務処理の引継ぎも円滑に行えた面もありました。しかし、テレワークでは、リアルタイムに、周りの作業担当者の状況を確認すること、声掛けすることも困難です。
これまでは、職場で机に座り、また、適度に、職場を歩き作業担当者に声掛けする等で、業務処理の進捗状況、作業担当者間の業務の偏り、職場の問題把握や対策指示などが比較的容易でした。しかし、テレワークでは、これらのことは、容易ではありません。業務処理の進捗を確認するために、度々、作業担当者の様子を確認しようとすると、逆に作業担当者の作業効率を落とし、モチベーションを下げてしまうことにもなりかねません。
外部組織のメンバーから業務依頼や、業務処理結果を外部組織メンバーに引き渡す際に、往々して、当初の業務の想定の範囲を要請されることがあります。これまでは、業務管理者と作業担当者を同じ場所にいたことから、作業担当者にそのようなイレギュラーな要請が入っても、業務管理者にスムーズにエスカレーションができてきたと思います。しかし、テレワークでは管理者と作業担当者の場所が離れていることから円滑なエスカレーションが困難になります。
2.テレワークで変えなければいけないこと
前記「テレワークで変わること」に対応し、業務処理の方法は漸次、テレワークに適した方法に変えていく必要があります。ここでは、いくつかの例を示します。
2.1 紙帳票、紙文書での業務処理の縮小、廃止
紙帳票、紙文書を利用する限りテレワークには移行できません。最初の段階は、紙帳票、紙文書を電子ファイル化
したものから順に、業務はテレワークに移行できるようになります。ただし、この時点で、特に留意したいことがあります。
「その紙帳票、紙文書を本当に原本としなければいけないか、スキャニングして電子化する必要があるか。」という点です。理由は、スキャニングにより、紙帳票、紙文書を電子化してPDF等にする作業はコストが嵩むからです。
紙帳票・紙文書を業務処理に先立って、スキャニングしPDFにする等電子化します。 電子化を行った後の業務処理は、テレワークに乗りますが、電子化作業自体はテレワーク化できずに残ります。
多くの企業では、まだ、紙ベースで業務処理をするという習慣が残っています。そのような場合、元の帳票を電子ファイルで作成しているにも関わらず、紙で回覧しているケースがあります。そのような場合は、元の電子ファイルをそのまま、あるいは、PDFにして利用することが可能です。
ワークフローが利用できる場合は、紙帳票を電子フォームとして再成形すれば、紙帳票を代替することができます。
既に、契約書の締結では始まっていますが、取引先等の外部のステークホルダーから頂く、あるいは、提出する書類を電子ファイルにしてもらうことです。この点は、新型コロナ対策で、取引先の理解が得やすくなっています。電子帳簿保存対応の証票についても、紙に印刷せず、一貫して電子で処理できる手段も用意されています。できるだけ、電子化のコストを抑えるのが良策と考えます。
2.2 業務の流し方
通常の事務業務は、外部組織の依頼から始まり、自部門内で複数の作業担当者が処理をし、次の結果を次の外部組織に引き渡します。テレワークでは、ワークフローでの業務の依頼、引継ぎを主体にすると作業効率が上がります。
・上記1にも記載しましたが、テレワーク環境下で、メールで業務処理を行いますと、業務管理者は、業務の滞留状態の把握もできず、作業者間の引継ぎも、「引き継いだ筈、いや聞いていない。」というような状況に陥ります。ですので、ワークフローを利用して、誰から誰れに、業務が引き継がれているのかを明確にする必要があります。
・メールを利用した場合のもう一つの問題は、依頼のキャンセルが正確に伝わらないことです。これは、2重処理、処理漏れを起こすリスクを高めます。ワークフローを利用して、依頼自体をキャンセルすることが確実です。
ワークフローにもいろいろなタイプのものが、存在します。全社員が利用するものであれば、IT部門ががっちり作り込めばよいと思います。しかしながら、特定業務であれば、業務の主体の部門が、エンドユーザーコンピューティングレベルで利用できるワークフローを採用すべきでしょう。そうしないと、IT部門のリソース不足により、テレワークへの業務移行が滞る可能性があります。
紙帳票をなくすので、当然、社内用の職印(認印)の押印は、廃止します。その代替として、ワークフローでは承認履歴を利用します。メールに添付した電子帳票に電子押印を付ける場合もありますが、そもそも、社内処理ですので、承認者を明記すれば、実は、電子職印までわざわざ付する必要性は低いのです。
紙帳票の場合は、よく聞くスタッフ部門、申請者の声は、以下のようなものです。
・スタッフ部門)イントラの注意事項をよく読んでくれないから申請ミスが多い
・申請者)折角申請したのに、子細なミスを指摘されやり直すことが多い。
期限に間に合わない、余分な工数が掛かる。どうにかならないか。
そこで、紙帳票から電子帳票、電子フォームに切り替える場合に、実施したい改善事項は、以下の点です。
・入力項目の丁寧な説明
・入力内容の論理的なチェック
これにより申請ミスは各段に減り、申請者もスタッフ部門も2度手間になることを避けられます。
2.3 ダブルチェック、クロスチェックの仕方
事務作業は、正確に行うことが当たり前です。そういう意味では、各社では、作業内容のダブルチェックまたは、クロスチェックを行っていることと思いますが、テレワーク化に伴い、これを徹底することをお勧めします。何故ならば、テレワーク環境では、作業に集中できないケースが増えるので、従来に増してミスが発生しやすいからです。
「ダブルチェック」は、誰かがやった作業結果を、もう一人が同じ作業をして確認する作業を指します。 作業ミス率が1%であった場合、ダブルチェックを実施すると作業ミス率は、0.01X0.01=0.01% になると言われていますが、三人以上掛けても、他者依存が増えるので、作業ミス率は減らないと言われています。また、第1作業者がベテランで、第2作業者の経験が浅い場合は、第2作業者は、第1作業者がミスする筈がないと思い込みがちであり、ミスの発見率が下がりがちです。
「クロスチェック」は、方法を変えてチェックします。また、人手による作業を減らす、機械化を推進することが肝要です。
人手による作業を減らす、機械化を推進することが肝要です。特に、転記作業には、ミスがつきものですので、このような単純作業は、機械化により削減して、人は、高度な判断作業に集中できるようにすべきです。
RPAによる機械化は工数も掛かり・柔軟性に乏しいことも多いのが実態です。作業量が特段多くない場合は、機械化に、WEBフォームをEXCELに転記したり、EXCELデータをWEBフォームに転記するなどの手段も使うことで、作業効率が上がります。
3.当日の作業量の把握と作業指示、進捗管理
テレワークになると事務所で顔を合わせている訳ではないので、業務管理者は、机の前に座っているだけでは、作業量が過多で、疲れている作業者、今のところ余裕のある作業者を見分けることができません。
業務管理者は、業務が円滑に進めるために、流入する作業量、作業中の作業量、完了した作業量などをワークフロー履歴から数値化して把握できるように努める必要があります。また、作業休息の意味も込めて、WEB会議ツールで、短時間でいいのでチームメンバーの顔を見ながら雑談する時間をとることもいいのではないでしょうか。
4.まとめ
テレワークになったことで、紙帳票、紙文書の縮減以外にも変化した環境があります。今回は、そのような環境を整理し、一般的に何を変えるべきかとについて整理しました。