【第1回】業務マニュアルを整備して、事務作業のテレワーク化を進めよう。はじめに

コラム
テレワーク

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する緊急事態宣言は解除されたものの、まだ、第2波の襲来も懸念されています。これからは、オフィスで集まって仕事をする形から、テレワーク・在宅勤務等で分散して業務を進めざるを得ない「with コロナ」の時代に入っていきます。皆さんの職場では、テレワークの準備が進んでいるでしょうか?
テレワークを進めると言っても、(1)テレワークに向いた仕事、(2)テレワークができない・向いていない仕事の2種類があるのは事実です。その中でも事務作業については、どの会社でもテレワーク化しておきたいところだと思います。テレワークを行うためのITインフラ準備や、労働契約・就業規則の改訂を検討している会社も多いと思われます。

本シリーズでは、事務作業のテレワーク化について、および、その進め方について取り上げます。
各自の経験値や周囲との阿吽の呼吸で、事務所に集まって作業を進めていた環境から、メンバーが在宅でばらばらに作業をするテレワークの環境化でも、滞りなく事務作業ができるようにする方法について取り上げていきます。その中に、情報資産管理の観点からのアドバイスも含めていきます。

想定している職場は、(1)主業務はあるものの(2)雑多な業務も数多くあり(3)メンバーは複数の仕事を掛け持ちし(4)人員も潤沢ではない、普通の事務所です。金融や証券、保険の主業務等のように業務が絞られ、処理量のある業務については、本シリーズとは別のアプローチがあると思っています。

テレワークというと、ついITインフラやセキュリティに注目しがちですが、この手のものは先行事例が出ますので、調査して真似ることができます。お金と時間で解決できるでしょう。一番のネックは、人が関わるところです。現在の業務にについて、業務マニュアルを整備して、「在宅でも仕事ができる方法」、「在宅を前提とした仕事の仕方」に変更するところにあります。これは自社で主体的に取り組まない限り前進はありません。
以下に本シリーズ内の大切な点について簡単に説明いたします。

1.業務マニュアルの整備と改善の継続

「在宅でも仕事ができる方法」、「在宅を前提とした仕事の仕方」に変更するには、業務マニュアルの整備と改善の継続が必要です。その中でも重要なことは3つあります。

(1)業務マニュアルベースで仕事を進めること

以心伝心や口述による仕事の仕方の伝承ではなく、明文化して誰もが共通に認識できる業務マニュアルをベースに仕事を進めます。

(2)業務マニュアルの改善を常に行うこと

実作業者が中心となって、より早く正確な作業ができるよう業務責任者に提案をします。業務責任者は、実作業者の意見を聞き、実務に即したマニュアルに改善をしていきます。無印良品の業務マニュアル「ムジグラム」に代表されるように、現場を知っている実務作業者の意見・感覚は重要であり、尊重する必要があります。

(3)業務作業の改革を進めること

業務責任者は、作成された業務マニュアルを参考にしながら、より早く正確に作業ができる方法をワークフローやRPAなどのITツールも使った上で検討・実現していきます。この段階では、テレワークでは対応できないとされた作業もテレワークで実現できるよう、必要に応じて業務作業そのものの改革も行います。

2.ITツールを利用する場合の留意点

(1)RPAツールを過信しない

みなさまの中には、RPAが全てを解決してくれると誤解している方がいらっしゃるかもしれませんが、RPAは魔法のツールではありません。現在のRPAは、導入費用、運用費用、メンテンナンス費用、メンテナンス人員がある程度かかることから、規模の小さな雑多な業務に使える程度にまでには発達していません。また、主にシステム間の転記には威力を発揮しますが、判断の必要な仕事を代替するには、まだ、力不足という段階だからです。ここは順次改善されていくものと期待しています。

(2)ワークフローツールを活用する

事務作業の現場には雑多な業務が多数あります。仕事を定型化するにはワークフローが好適です。これにより、業務マニュアル自体の量が減り、作業手順もワークフローに従い、作業内容もワークフローに規定されたように、より正確になっていきます。ただし、雑多な多くの作業をワークフロー化するので、全面的にIT部門に頼るようでは利用が進みません。 事務作業部門で、新規ワークフローの追加、改修ができるレベルのツールの導入が必要です。また、幸いなことに、そのようなワークフローツールが増えてきています。

3.段階的な取組み

一気にテレワーク用の業務マニュアルを整備するのではなく、例えば、以下のように段階的に進めます。

(1)初期段階(共通)

  • 作業の棚卸と現状(As-Is)ある業務マニュアルを収集します。

  • 作業に対して、業務マニュアルがないケースは全く属人的な作業を行っていることがわかります。

  • 作業一覧を作成し、週、月単位で、実行している作業量を把握します。

  • 作業量の多いもの、重要度が高いものを業務マニュアル整備の優先順位の高いものとします。

  • 業務マニュアル整備の優先順位の高いものについて、現状の業務マニュアルで、業務責任者と実務作業者で、レビューを行い、解離状況を把握します。

優先順位の高い業務マニュアルについて分岐Ⅰ(業務マニュアル整備)と分岐Ⅱ(テレワーク化)に分けて作業します。分岐Ⅰの成果を分岐Ⅱで逐次利用します。

(2)分岐Ⅰ(業務マニュアル整備)

  • 業務責任者の指導の下、業務マニュアル改定案を作成します。

  • 作業実務者に業務マニュアル改定案を提案し、実作業面からの代替提案や意見をもらいます。

  • 業務責任者・作業実務者で、業務マニュアル改定案の内容に関して調整や合意を行います。

  • 業務マニュアル改訂案による運用テストを行います。

  • 業務マニュアル改訂案を本番に適用します。

(3)分岐Ⅱ(テレワーク化)

  • As-Isの業務マニュアル、業務マニュアル改訂案をベースに、テレワーク化の課題を確認します。

  • ITツールの導入や、業務方法の変更などによる解決案を検討します。

  • 業務責任者の指導の下、テレワークに対応した業務方式を策定します。

  • 策定したテレワーク対応型の業務方式を作業実務者と協議し、実現性の確認をします。

  • 必要となるITツールを導入し、初期設定をします。

  • 業務責任者指導の下、テレワーク対応型業務マニュアルを作成します。

  • 作業実務者に、テレワーク対応型業務マニュアル案を提案し、実作業面からの代替提案や意見をもらいます。

  • テレワーク対応型業務マニュアル案をテスト運用します。

  • テレワーク対応型業務マニュアル案を本番に適用します。

(4)全体適用(共通)

優先業務のテレワーク化を通じて得たノウハウを利用して、他の業務もITツールなどを利用してテレワーク化します。

4.まとめ

 Withコロナの時代に向けてテレワーク化しておきたい事務作業。テレワーク化を進めるための重要なポイントとなる業務マニュアルの整備方法などを、今後、情報資産管理に関するアドバイスも含めた形で順次掲載を行っていきます。 みなさまの会社のテレワーク・在宅勤務化の参考にしていただければ幸いです。

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