【寄稿】電子取引記録の保存要件が緩和されます~2020年10月から電子帳簿保存法が一部改正~
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2019年5月にデジタルファースト法(「デジタル手続法」とも呼ばれる)が公布され、日本の行政に関する手続きを原則としてデジタル申請に統一することが決まりました。過去に失敗を重ねて世界から周回遅れとも批判されていた日本の行政デジタル化ですが、政府は今度こそ本格的にリベンジを図る決意のようです。
この関連で、税制関係ではe-Tax(電子納税)の義務化や、国税書類スキャナ保存要件の規制緩和等が実施されていますが、主流となりつつある企業間の電子取引記録の保存についても、大胆な緩和が行われることとなりましたので、レポートします。
最近は企業でも電子取引の利用が普及しています。例えば、文房具や備品をアスクルなどのECサイトから購入する、見積依頼から領収書に至る取引プロセスを電子メールと添付したPDF文書の交換で行う等は、ごく普通に行われています。また印紙税を節約する狙いもあって、建設業界や不動産業界では、企業対企業や企業対個人でも電子契約を締結するケースが広がっています。このように紙書類を全く用いない取引=電子取引についても、その記録を7年~10年間納税地で保存すること、及びその保存要件が税法の電子帳簿保存法第10条(電子取引)でしっかり定められています。
令和2年度の税制改正で、税務電子化を加速させるため電子帳簿保存法第10条(電子取引)について2020年10月から改正することが織り込まれました。
国会審議を経てこの電帳法改正案が承認されると、企業は電子取引記録を電子保存サービス事業者やクラウドサービス事業者と、改編防止を含む保存委託契約を締結したうえで保存を委託することで、保存要件は満たすことになります。1.電子取引にも記録保存の義務と要件がある
帳簿の電子データ保存や領収書等の国税書類のスキャナ保存のように、事前に税務署へ電子保存承認を申請する必要はありませんが、意図的に取引情報を抹消する等の悪質なケースには、連結納税の承認取消しや青色申告の承認取消しなど税法違反の罰則が課されますので、経営者や経理部門、情報管理部門の皆様は、ご注意をお願いします。今までの電子取引記録の保存要件は以下の通りでした。
電子取引記録の保存要件(2020年9月まで)
1.電子取引保存システムに必要な要件
①取引情報を授受後、遅滞なくタイムスタンプを付与して真実性を確保すること
②日付と金額の範囲指定、その他主要項目の複合検索が速やかにできること
③関係する帳簿種類に応じた記録項目を、検索の条件として設定できること
④保存しているデータがディスプレイとプリンターに整然・明瞭と出力できること
2.企業での申請・運用に必要な要件
⑤正当な理由のない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を整備し運用すること
(この場合は①のシステム要件は不要)
⑥電子取引情報の保存担当者の情報を保存すること
⑦システム運用規程等を整備し、書類として備え付ること
※電子取引については税務署への「保存承認申請書」の提出は不要
2.2020年10月から追加される電子取引記録の保存要件
2020年10月から追加される電子取引記録の保存方法
①請求書等の発行者によりタイムスタンプが付された電子記録を受領した場合、
②受領者側でデータの改編ができないシステムやサービスを利用している場合、
③上記①②のいずれかを満たして、受領者側で自由にデータ改編ができないことが担保されている
場合には、
④国税関係書類が適切に保存されているものとして取り扱うこととする。
一般のクラウドサービス事業者に保存を委託する場合には、データ改編防止に加えて、メンテナンス時のデータ消去事故を防ぐ措置の特別契約を追加しておくなどの注意も必要でしょう。
なお自社グループ内のプライベートクラウドでの保存については、第三者契約によるデータ改編防止の担保ができないので、認められないとのことです。
新たに追加される保存方法については、事前に税務署に承認申請する必要はありませんし、受領した電子データへのタイムスタンプ付与又は正当な理由のない訂正削除防止に関する社内規程の整備も、いずれも不要となります。
いずれにしても、これから取引の主流となる電子取引記録の保存方法について、現実に即した規制緩和が行われることになります。
経理部門や税務調査対応部門で必要な実務詳細は、2020年夏ごろに国税庁から通達される予定とのことですので、その際に改めてレポートいたします。